気候変動に対する方針・基本的な考え

近年の台風・豪雨とそれに付随して起こる洪水の頻発や被害の激甚化という急性リスク及び平均気温の上昇という慢性的リスクの高まりにみられるように、気候変動は、今日において解決が急務とされる社会問題の1つとなっています。岩通グループは、ESG経営を推進していく中で、「持続可能性を考慮した調達活動の推進」「環境配慮型製品・サービスの提供」「事業所活動における環境負荷の低減」という3つの環境に関わるマテリアリティを特定しており、事業を通じた気候変動対策を最重要課題として位置づけています。

岩通グループは、サステナビリティ基本方針である「人やモノを繋ぐコミュニケーション技術の提供により企業や企業で働く人々の成長・発展を支援し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指す」という使命を果たしながら、パリ協定で掲げられた国際的な目標達成を目指すべく、TCFD提言を支持し、TCFD提言に沿った情報開示に取り組んでいきます。


ガバナンス

岩通グループは、気候変動に始まる自然環境問題をESG経営推進のための重要課題と捉えており、気候変動リスク・機会を特定し対策や取り組みについて、社長を委員長としたESG委員会での議論を踏まえて決定しています。また、同委員会の内容は取締役会に報告され、経営に関するリスク・機会と、その対応について意思決定をしています。

ガバナンス

戦略

リスク・機会の特定プロセス

 岩通グループの事業は、「情報通信事業」「電子計測事業」「印刷システム事業」の大きく3つから構成されており、それぞれの事業でのステークホルダーに想定される気候変動リスク・機会が異なることから、事業別にリスク・機会の抽出及び特定を実施しています。

 2030年時点での財務影響について、事業別・ステークホルダー別のリスク・機会の抽出にあたり、 次の観点を設定し検討しました。

 
  
移行リスク(1.5℃シナリオ)
  

-政策規制:GHG排出に関する規制強化
-市場:エネルギー需給の変化/低炭素製品の需要変化
-技術:次世代技術の進展・普及
-評判:ステークホルダーの評判変化

 
 
  
物理リスク(4.0℃シナリオ)
  

-慢性:地球温暖化による環境変化
-急性:自然災害の激甚化

 

特定した事業へのリスク・機会

 岩通グループは、気候変動問題の動向に対するシナリオ分析を実施し、事業別のリスク・機会の抽出結果に基づいて特定した当社への気候変動によるリスク・機会は表1の通りです。移行リスクに対しては、主要事業において、サプライヤでの部品・材料の製造等からユーザーの製品使用まで、多くの電力を使用することから、「GHG排出に関する規制強化」や「エネルギー需給の変化」、「低炭素製品の需要変化」に基づくリスクと機会が主と想定されます。また、物理リスクに対しては、気候変動関連災害による工場・事業所への影響を主なリスク・機会として捉えました。

表1 特定した事業へのリスク・機会及び対応策

気候変動リスク
    機会の分類
シナリオ 気候変動により想定される影響 対応策
移行リスク 政策規制
  • GHG排出に関する規制強化
1.5℃
  • 顧客のCO2排出量削減要求やカーボンプライシング導入に伴う開発コストの増加
  • 顧客のCO2排出量削減要求等に適切に対応できない場合の取引停止、事業機会の損出
  • 炭素税導入に伴うエネルギー使用コストの増加
  • 製品の省エネルギー化推進とその実現による事業機会の獲得
  • 老朽設備の更新及び最新機器の導入によるエネルギー使用量の削減
技術
  • エネルギー需給の変化
  • 燃料の高騰及び再生可能エネルギー比率増加による燃料費/電気代の増加
  • 省エネルギー化推進及び再生可能エネルギー発電設備の導入
市場
  • 次世代技術の進展
      普及
  • 部品/材料の低炭素化対応に伴う調達価格の上昇
  • 調達方法及び設計の見直しによる長期的なコストダウン施策の実施
物理的リスク 慢性
  • 地球温暖化による環境変化
4.0℃
  • 熱中症、気候変動起因疾病及び体調不良者の増加
  • 空調の見直しを主とした労働環境の再整備
急性
  • 自然災害の激甚化
  • 自然災害による工場
      事業所の操業停止または稼働率低減による売上高の減少
  • 災害発生シミュレーションの実施及び災害対応マニュアルの整備
機会 政策規制
  • GHG排出に関する規制強化
1.5℃
  • 顧客のサプライチェーンガイドライン及びカーボンプライシングへの早期対応による競争力の強化
  • サステナビリティ調達ガイドラインの制定及び製品アセスメントの強化による環境配慮型製品の開発推進
市場
  • 低炭素製品の需要変化
  • 電気自動車(EV)等パワー半導体使用機器の普及に伴うパワーエレクトロニクス計測器の需要増加
  • パワーエレクトロニクス計測器の市場拡大に伴う多様なニーズの発生
  • 当社パワーエレクトロニクス計測器の性能向上及びラインナップの拡充
  • 新世代技術の進展
      普及
  • 先進的な省エネルギー技術の確立及び普及
  • 顧客要求が高いSBT認定取得による当社の評価向上
  • 新たな省エネルギー技術を当社製品に取り入れることによる商品力の向上
  • SBT認定取得及びCO2削減目標達成施策の実施

気候変動のリスク・機会により想定される財務インパクト

 岩通グループは、各種シナリオで想定した気候変動リスク・機会が表出した際に想定される財務的インパクトを次のように想定しました。

 4.0℃シナリオでは、物理的リスクのうち特に「急性リスク:自然災害の激甚化」を、1.5℃シナリオでは、移行リスクのうち特に「政策規制:GHG排出に関する規制強化」による製品のCO2排出量削減のための開発費の増加、炭素税による課税及び「技術:エネルギー需給の変化」に伴うエネルギー価格の高騰による収益性の変化を想定しました。


リスク管理

気候変動リスク・機会の評価

 岩通グループは、シナリオ分析により特定した気候変動における「政策規制」、「技術」、「市場」、「ステークホルダーの評価」に関する移行リスクと「慢性」、「急性」の物理リスクについて、表2に示す「影響度」と「可能性」の2つの視点で評価しています。

表2 影響度、可能性の評価

影響度
可能性

 岩通グループは、評価した気候変動リスク・機会から重要なものを選択し、それらに対する対応策を、「実現可能性」と「効果度合」の観点から評価し、現実的かつ効果的な取り組みを優先して、その内容を決定しています(表1参照)。

気候変動リスク・機会の管理

 岩通グループは、環境マネジメントシステムを通じた気候変動に関する最新情報のモニタリングを行い、ESG委員会において事業活動の変化を考慮し、リスク・機会、影響度などの見直しを適宜実施します。

気候変動リスク・機会の全社的リスク管理への統合

 岩通グループは、気候変動の全社的なリスク・機会をESG委員会にて分析・評価し、取締役会に報告します。決定された気候変動リスク・機会は、他のリスクと共に経営層の指揮のもとリスクの低減及び機会の獲得に向けた対応策を実行しています。


指標と目標

目標 : カーボンニュートラルへの取組みを推進

 岩通グループは、SBTの1.5℃水準(Scope3排出量についてはWB2.0℃)を遵守し、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標を下記の通りとします。
・Scope1,2排出量については2020年度比42%低減(年率4.2%低減)
・Scope3排出量については2020年度比25%低減(年率2.5%低減)

Scope1及び2 削減目標

Scope1及び2 削減目標
  • 電力事業者削減努力とは、電力事業連合会が掲げる2030年目標の電力CO2排出係数0.37/kgCO2を適用した場合の削減量であり、2020年の電力CO2排出係数から24%削減されると設定しました
  • 省エネ削減は、スコープ1&2排出量に対して現状比15%削減を見込み設定しました
  • 再エネ切替は、「2030年削減目標」全量から上記2つの方策での削減量の差分を設定しました


Scope3 削減目標

Scope3 削減目標

サプライチェーン排出量実績(Scope1,2及び3)

Scope・カテゴリ 排出量(tCO2)
2020年 2021年
GHG排出量(Scope1+2+3) 120,243 109,555
Scope 1 (直接排出) 1,311 1,251
Scope 2 (エネルギー利用に伴う間接排出) 4,254 4,022
Scope 3 (バリューチェーンからの間接排出) 114,678 104,283
カテゴリ 1 購入した製品・サービス 65,336 58,004
カテゴリ 2 資本財 3,218 1,175
カテゴリ 3 Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 839 814
カテゴリ 4 輸送、配送(上流) 5,429 5,311
カテゴリ 5 事業から出る廃棄物 376 458
カテゴリ 6 出張 189 242
カテゴリ 7 雇用者の通勤 1,076 1,313
カテゴリ 8 リース資産(上流)
カテゴリ 9 輸送、配送(下流) 121 154
カテゴリ 10 販売した製品の加工
カテゴリ 11 販売した製品の使用 37,819 36,475
カテゴリ 12 販売した製品の廃棄 14 15
カテゴリ 13 リース資産(下流) 262 321
カテゴリ 14 フランチャイズ
カテゴリ 15 投資
  • 「―」は、非該当項目につき対象外としております。

Scope1及び2 排出量実績

Scope1及び2 排出量実績

Scope3排出量実績

Scope3排出量実績